CRT 装置の分解法

CRT の説明には「高圧危険.分解しないで下さい」とあります. ハッタリではありません.本当です. ということは,どこに高圧がかかっているのかわかってしまえば,安心して分解できます. そういうためのページ.

免責

この文書自体の信憑性・運用によるいかなる結果についても筆者は一切関知しません. つまり,「感電による心臓麻痺で昇天」することがあるかもしれないが,筆者は責任はとらない,ということ.取ってよ,といわれてもこまります.

原理

CRT では電子銃から発射された電子を電界で加速し,磁界で収束・偏向して蛍光面に当てています. この加速のための電界が高圧 (数万V)であるわけです.

CRT といえども真空管の一種です. 3極管を思い出しましょう. ヒータで熱せられたカソードから熱電子が放出され,グリッドで制御,プレートには 高圧がかかっています. そう,危ないのはプレートです.

では,CRT のプレートはどこにあるのでしょう? ゴミ捨て場に放置してあるようなテレビの残骸を思い出してみてください. (思い出せない人は CRT 装置のすき間からそぉーっと覗いてみましょう. みえるかな?) 蛍光面の裏側に吸盤のようなものが付いていますね. これがプレートです.

もっとも CRT の場合,この電極は「アノード」といい,吸盤みたいなものは「アノードキャップ」という名前がついています. 2極管式の名前ですね. ここにつながっているケーブルから高圧が供給されています. 電源を切った後でもこの回路に電荷がチャージされている場合があり,危険なわけです. ということは,この電荷を安全に逃してやればよいわけです.

方法

  1. まず,工具の用意.
    放電用の工具として用意するものは
  2. 導線でワニグチクリップとマイナスドライバーの金属部分をつなぎます.
    工具の準備はこれで ok です.
  3. CRT 装置の電源ケーブルををコンセントから外します.
    本体の主電源を切っても通電している回路があるためです. ここらは電化製品を分解するときの常識,ですね.
  4. 裏ぶたを開きます.
    中の回路には手を触れないように.
  5. ワニグチクリップを,本体の FG に接続します.
  6. アノードキャップの吸盤のスソをチロリ,とめくって,マイナスドライバーの 先を突っ込みます.
    このとき「ぱしっ」と火花が飛ぶ音がすれば ok. 念のため,放電の音がしても何度か突っついて放電を確実にしたほうが よいでしょう.
  7. これで安全です.心おきなく中をいじりましょう.

もろもろ

絶縁破壊に注意

これがわかれば,自分で定期的に CRT 装置内部を清掃できますね. 内部にホコリがたまると,絶縁破壊を起こすことがあります. 以下,大学の後輩の話.

彼は FM-NEW7 を使っていました. FM-NEW7 + CRT + FDD という構成. ある日,彼がいつものように FM-NEW7 を使っていたところ,ディスプレイがふっ,と消えた,と思ったら,ぼん.CRT から煙が.

が,被害は CRT だけでは済みませんでした. FM-NEW7 の電源・FDD インターフェースにまで及び,彼のシステムは再起不能に. あまりにもショックだった彼は PC-286 へと乗り換えてしまいましたが,これは余談. 状況を考えると,高圧が AC100V のラインに乗って,他の装置へと流れたようです.

ここで気をつけて欲しいことが1つ. カラーテレビにしてもコンピュータのディスプレイにしても,価格競争の激しい製品ですね. 実はこれら,件の高圧部分は絶縁されていないのです. おそらくコストダウンのため,オートトランス(単巻変圧器)で AC100V を直に昇圧しているのでしょう. このため,いったん,高圧の絶縁が破壊されると,このような重大な被害が及ぶこともあるわけです. アパートや寮住いの場合,下手をすると隣近所に被害が及ぶかも. 気を付けてね.


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2002 年 8 月 21 日更新
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