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フィルタと遅延

ここでいうフィルタは,電気回路での信号を選別するもののこと.

一般にフィルタの周波数特性を鋭くすると遅延が大きくなる. 「時間領域での急峻な波形は広い周波数帯域を持つ」というのがギブズ現象である. フーリエ変換・逆変換は紙の表と裏みたいな関係なので,同様に「周波数領域での急峻な特性は,時間領域で長いインパルス応答となる」とも言える.

ときどき「周波数特性の鋭さや位相特性をそのままに遅延を小さくできないか」と考える人がいる. 周波数・位相特性とインパルス応答波形は1対1の関係であるから,遅延を小さくしようとしたらインパルス応答波形をそのまま時刻の前のほうにタイムシフトさせることになる. すると…

入力信号が来る前にその前触れが出力に現れる

というフィルタを作る,ということになってしまう. こんなフィルタ,物理的には実現不可能なのは考えるまでもない. (まぁ,数式上は存在するのだけどね.)

が,もしこんなフィルタが実現できたとしたら,まずは地震計につないでみるのがいいだろう. すると,地震予知が可能になる. これで地震に怯えず暮らせることになる.はっぴー.

株価を入力してみよう. 株の値動きが予知できるので,相場で大儲けできるはずである. が,みんながみんなこのフィルタを使ったとしたら,株式相場自体が成立しなくなってしまう. デフレスパイラルどころの騒ぎじゃないはずだ.

自分の銀行口座の預金残高を入力してみよう. 学校のテストの点数でもいいだろう. 増えるにしても減るにしても,夢もへったくれも無くなってしまう. 決められた未来の「運命」のみが支配する世界になってしまう.

「周波数特性を変えずに遅延を小さくする」というのは,つまりはそういうことへのチャレンジなのである.

予知と予測

「周波数特性・位相特性をそのままに,より遅延の小さいフィルタを作る」というのは未来予知フィルタを作ることになってしまうので実現不可能である.

ところで,「予知」と似た言葉に「予測」というものがある. 「予知フィルタ」は有り得ないのだけど,「予測フィルタ」というのは存在する. 現に ADPCM で利用されていて,物理的に実在するフィルタである.

では,予測フィルタとはどのようなものなのだろうか. 一言で言えば「過去の傾向を分析し,未来を推定する」フィルタである. もちろん,「過去の傾向」から予測できない未来ならば,推定は外れる. 当たるも八卦,当たらぬも八卦,である.


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Last-modified: 2010-02-26 (金) 05:47:51 (3621d)