節電デマ

「関西電力が節電を呼びかけている」「九州電力が節電を呼びかけている」というデマが出回っているようである. 東京電力で電力が不足しているのは確かだし,これらの電力会社から電力を融通しているのもホントらしい.

問題は「節電した分が東日本に送られるか」というところなのだけど,これは期待できない. というのも,60Hz 地域から 50Hz 地域に電力を送る手段がか細いからだ. 西日本全体の余剰電力分だけで間に合う程度しか無い.

60Hz の電力を 50Hz の地域に送るには「周波数変換所」という電力設備を経由しなくてはならない. が,この設備は3箇所しかなく

佐久間周波数変換所
30万kW
新信濃変電所
60万kW
東清水変電所
10万kW

合わせて 100万kW の能力しかない( http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%90%E4%B9%85%E9%96%93%E5%91%A8%E6%B3%A2%E6%95%B0%E5%A4%89%E6%8F%9B%E6%89%80 ).

一方,60Hz 地域の発電能力は

中部電力( http://www.chuden.co.jp/corporate/company/com_outline/index.html )
3263万kW
北陸電力( http://www.rikuden.co.jp/company/gaiyo.html )
796万kW
関西電力( http://www.kepco.co.jp/corporate/profile/index.html )
3306万kW
中国電力( http://www.energia.co.jp/profile/outline.html )
1199万kW
四国電力( http://www.yonden.co.jp/corporate/yonden/summary.html )
666万kW
九州電力( http://www.kyuden.co.jp/company_outline_index.html )
2002万kW

合計すると 11232万kW となる. 50Hz 地域に融通できるのはこのうちの 100万kW であり,全発電能力の 1% にも満たない. また,これらの発電能力は,電力を一番消費する「真夏の昼間」に耐えうる能力があるので,冬季の今ではもちろん余裕がある.

というわけで,60Hz 地域でいくら頑張って節電しても,50Hz 地域の人が助かることは無い. 精神的な意味で個人的に「祈りを込めて」節電するのは構わないけど,「被災している人の役に立ちたい」と思ってる人をミスリードすることだけはやってはいけないと思う.

(追記)

東京電力のプレスリリースによると,北海道電力からの電力融通もできるようになったらしい. 北海道-本州間の送電能力は 60万kW.一方,北海道電力の発電設備は合わせて 742万kW ( http://www.hepco.co.jp/corporate/ele_power/equipment/stb_1.html ).発電能力の 8% が送電に回せることになる. 北海道電力の電力需要は冬季にピークが来るそうなので,こちらのほうは「節電のお願い」が出るかもしれない. 北海道にいる人は,北海道電力からのお知らせには注意したほうがいいかも.

(3/15追記)

北海道電力によると,本州に目一杯送電しても余裕があるとのこと. 特に節電する必要は無いそうだ.

あと,60Hz 地域で中国電力が抜けてたので追加. 結論には変更は無し.


トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2011-03-15 (火) 18:49:57 (4813d)